「嫌われ松子の一生」 〜夢と希望を追う松子をどう捉えるか〜

 わにとかげぎすの連載についてはまだもう少し遅らせます。結構似たようなことを反復して言ってしまってる気がするので、他のことを書いたりしながら幅を広げようと思います。
 さて、「松子」です。映画の持つグロテスクなポップさ(ゴスロリとかパンクスとかミュージカルとか)がちょっと嫌かも、と思って(実際「ハイテンションを演じる」ような空気が散りばめられていて、最初は結構我慢してました)見るのをためらっていたんですが、意外にしっかりした映画でした。
 夢や希望を追って日常を生き抜こうとする松子と、その周りの人間たちがどういう顛末を迎えるか。松子の生涯を時事ネタを織り交ぜつつ追っていくというストーリーです。作中には、夢や希望を追いながら、それを実現できなかった松子(に代表される当時の多くの人々)の受け皿になった光GENJIが描かれていたり、松子の元教え子で、最後の愛人でもあった龍がすがる神は松子の姿そのもので、それにオーバーラップする松子は不潔で醜く太っていて髪は散り散りで、いつもおんなじピンクのカーディガンを着ていて、ようするにどっからどう見てもオウムの麻原だったりする、と事実をけっこう忠実に追っています。
 こういう映画を、ゴスロリに通じるようなグロテスクなデコレーションまみれで作れるのはなんでなんだろう、と思います。もちろん、もう少し前ならホントにお涙頂戴モノでやったんでしょうが、この作品がもっと若いコ向けの、脱力と中身のないハイテンションな感じで撮ったということに、何か大事なことを感じます。