「わにとかげぎす」連載はじまり 〜第一話:めざめ 向こう側と自分をつなぐ不吉な手紙〜

 さて第一回目。バイト先で手に入るにも関わらず、バイトまで待ちきれずにヤンマガを買いにいってしまいました(失笑)。ちょっとだけ内容を説明します。
 今回のわにとかげぎすの主人公は、思わず流れ星に「友達が欲しい」と祈るほど、強烈に孤独を感じています。とにかく色々な「めんどくさいこと」を避け続けた結果、彼はひとりぼっちになってしまった模様。寂しくてたまらなくなってしまいます。それはもちろん自分が招いた結果なわけですが、彼はそれを真摯に受け止め、「今までたまりにたまったツケを一気に返」そうと、努力を決意しているようです(なんだかグリーンヒルの関口のその後の物語のようにも見えます)。そんなことを考えながら警備員として巡回をしていると、彼は不吉な手紙を送られます。「警備員へ お前は一年以内に頭がおかしくなって死ぬ」と書かれた手紙におびえまくるところで第一話は終わりです。
 主人公は孤独で、向こう側の世界と完全に隔離された生活をしています。彼がそこで受け取ったのは、とにかく誰かからの「不幸の」手紙。孤独で、寂しくて仕方なかった彼にとっては、向こう側との唯一の接点です。内容は不気味で「不吉」でも、彼にとってみれば、願ってもない「幸運」なわけです。ここで、僕はどうしても映画「アメリ」を思い出してしまいます。
 アメリは空想の世界に生きる女の子。いつかは外の世界に行こうと思っているんですが、なかなか踏み切れずに大人になってしまった(たしか20代半ばだった気がしたんですが、忘れましたw)。そんなある日、彼女は一人暮らしをしている部屋の壁の中に、昔その部屋に住んでいた人の宝物を見つけます。それは自転車のミニチュアや野球カードなど、どうやら小さな男の子が大切に集めたもののようでした。彼女はその宝物を見ながら、ついに外の世界に出て行くことを決意します。宝物の持ち主に、つまり今ではおっさんになってるであろう男の子に、それらを返そうと思うわけです。大家さんや近隣住人の世間話に付き合いながら、果たして彼女は持ち主のおじさんに宝物を返すことに成功するんですが、そのとき、彼女は自分のこもっていた世界と外の世界が溶け合う感覚を味わいます。そしてこの多幸感を、自分の身の回りにいる幸せを感じていない人たちに分けることを思いつきます。
 ・・・とまあ、このように、アメリは自分の世界を抜け出ようとする女の子のお話なわけで、わにとかげぎすと重なる部分があります。しかしアメリにおいては、向こう側とこっち側をつなぐアイテムが小さな男の子の宝物であるのに対し、わにとかげぎすでは不吉な手紙w。この辺りが、今後どういうことになっていくのか、面白そうです。
 しかしそれにしても、主人公が怖がってる顔がまた新しい絵で笑ってしまいました。まだ表現のストック持ってるんだなあ・・・すごいです。
 古谷実の作品で見事なのは、主人公にとって、孤独は恐ろしいモンスターであると同時に、甘える対象でもある、という奇妙な感覚です。自分をさらけ出すことは不安なことであり、その不安から逃げていると孤独を味わうことになります。逃げ場としての孤独と、めんどくさいことをきちんとやる「向こう側」への憧憬。この不安定なバランス感覚が異様なリアリティを持ちます。
 詳しくは以前のエントリに譲りますが、前回シガテラで見えてきたひとつの結論として、「色々頑張ってはみても、結局みんな孤独なんだ」というものがあると思います。それを踏まえたうえで、今後の展開を見守っていきたいです。
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