古谷実

『わにとかげぎす』完結 メモ版

結論からいえば、『シガテラ』以降の古谷作品として、新たな発見とか前進とかはなかったと思う。ただ、それは怠慢とかそういったことでは全然なくて、誠実な姿勢を持って悩んでいる古谷実の姿がそのまま作品の迷走として反映されていた、ということだったの…

『わにとかげぎす』来週が最終回だそうな

いきなりな気がして驚いてしまった。考えたら4巻で終了ってのは『僕といっしょ』『ヒミズ』と同じなわけで、古谷作品としては普通。 まあそんな話はどうでもよくて、今回の作品、ここで終わるってのは、正直「折れた感」は否めないと思います。折れたからど…

孤独と自意識過剰の関係

文化系トークラジオLifeがこの間「友達」をテーマにしたので(→http://www.tbsradio.jp/life/20070422/)、古谷実の『わにとかげぎす』について何かヒントをと思い、メールを送ってみました。 古谷実に特化した内容だったので読んでもらえるか心配でしたが、…

「友達が欲しい・・・」 『わにとかげぎす』の孤独を考え中

文化系トークラジオLifeの今週のテーマが「友達」(→http://www.tbsradio.jp/life/20070422/)ということで、『わにとかげぎす』の主人公富岡君が友達を求めるゆえんを探るためにも、今回は必聴。 孤独を恐れていた『稲中』『僕といっしょ』『グリーンヒル』か…

「真実」の絶対性を信じ、やがて「真実」の必要性に陥るシガテラ

↑↑ 訳あって発表ができなかったので、その際の原稿をアップします。 元ネタとして、宮台真司さんのblogをご参照ください→http://www.miyadai.com/index.php?itemid=357。 「あるはずのないもの」を「あるかのように振舞う」のは、「ここではないどこか」の真…

古谷実作品、メモ

今日は前述の授業で発表があったので、その際に調べたことをいくつか挙げようと思います。 自意識の二段階構造 古谷実の誠実さがよくわかる部分です。稲中の6巻「不美人」のエピソードでは、勘違いなブスの自意識過剰を描きながら、実は自分もそういった自…

わにとかげぎす 単行本1巻発売に関するメモ

ついに発売されました。表紙はキングクリムゾンみたいな表紙(!)です。気になる回を単発でピックアップしてこのブログも更新されていたわけですが、単行本で読むと、そのときには見えにくかったものがクリアに見えて、あらためてなるほどなあと思ったりしま…

「不安」⇒「絶望」⇒その外へ 〜ドラゴンヘッドの闇と傷頭〜

古谷実氏の尊敬する望月峯太郎氏の超名作、ドラゴンヘッドをこの間読み返していました。やっぱりいつ読んでもこの閉塞感はものすごいです。トンネルを出た後でも、息苦しい闇は続きます。 あ、これ以降ネタバレするかもしれませんが、未読の方、あしからず。…

「わにとかげぎす」メモ(第15話参照)

雨川くんの惚れた女性、ヤクザにレイプされたとかで弱み握られて、無理矢理そのヤクザの愛人にされているということが前回判明。その女性がヤクザの手から逃れるために、ヤクザの部屋に保管されている金庫(雨川くんの好きな女性を含む、多くの被害者のレイ…

「わにとかげぎす」第12話:革命初日

だ・・・・だけどね・・・さすがにこんな男でも最近よーやく“これじゃダメだな”“これじゃその辺の石コロ大して変わらない生涯だな!”と思うようになって・・・・変わろうと決意したんです!孤独を罪ととらえ・・・・今までの不誠実を一気に清算してやろうと!いずれ俺は革命…

「わにとかげぎす」第8話:隣の女 

おそらくこの作品のヒロインになるであろう羽田さん。彼女も今までと少し違います。ていうか、僕といっしょを感じます。 古谷作品のこれまでのヒロインたちは、すべてを受け入れ、すべてを許す母性丸出しの女の子たち。社会に適合できずにひねくれる人間たち…

「わにとかげぎす」メモ

どうも似たようなことばかり繰り返してしまうので、もう少し動きがあってから書こうと思っています。ただ、少しメモ書きとして、なんとなく気になったことを書いておきます。 絵が「すごい居そう」な人から、コミカルな感じになってきてること。稲中以来、も…

虚飾を暴く「死ね死ね団」団長前野→虚構のような現実を生きる荻野くん

唐突だが、虚飾を暴こうという古谷実のスタンスは、実は稲中後期の時点で既に崩れ始めていたことに気づいた。「死ね死ね団」という活動によって、前野や井沢がやっていたことはなんだったのか。それは一言で言ってしまえば、ラブコメという虚構の世界に憧れ…

「わにとかげぎす」第7話:買い物

古谷実の描くヤクザってすごくカッコいい!!冷静かつ倫理的、なのに反社会的っていう多分古谷実の「こんな男になりたい」が詰まってるように見えます。 前作シガテラの谷脇なんてものすごくかっこいい男でした。誰にも媚びず、何事にも動じず、そしてギャグセ…

「わにとかげぎす」第6話:運のいい人に捜された運の悪い人

連休を挟んだため、一週間置いての連載。扉絵がまたすごいです。りんごにひとつ目があって、ほとんどプログレッシブロックのジャケットみたいになってます。 「男の一生は過酷だ・・・・闘わなけりゃ死人扱い・・・・油断をしたら すぐさま攻撃を受ける・・…

「わにとかげぎす」第5話:フレッシュなのを求む

前回の書きかけの続きからはじめます。(後日加筆予定) カミというのは人間のコントロールのきかない部分、つまり人智を超えたものです。だから、人間の利益などとは全く無関係に存在しています。カミは自然現象ばかりを指すのではなく、人間の内側に存在す…

「わにとかげぎす」第4話:目撃者 〜運命=「バケモノ」=不幸の「手紙」〜

この文章は書きかけです 今回のあらすじは割愛。てかこれからは書くの止めますね、ネタバレするし。 ヒミズに出てきたバケモノってのは、「運命」=「人智を超えた何か」=一つ目の「バケモノ」って流れだったと思うんですが、わにとかげぎすの手紙ってのも…

「わにとかげぎす」第3話:甘んじて戒めを受けるつもり 〜望んで対峙する二つの時間〜

小さい頃からずっと孤独を愛していたはずなのに、ある日突然寂しさに耐え切れなくなった男、富岡ゆうじ君。ついに孤独を捨てて外の世界にいこうと決意した矢先、彼は不吉な手紙を受け取る。「警備員へ お前は一年以内に頭がおかしくなって死ぬ」。孤独な世界…

古谷実による「普通」へのテロ

ニートという言葉を聞くと、古谷実作品の主人公達を考えてしまいます。 僕個人としては、ニートという言葉にネガティブなものは何一つ感じません。でも、ニートになったら親は泣くだろうな、とは感じますw。でも実際、頑張るということは良いことなのか?仮…

「わにとかげぎす」第2話:窓辺の人影 〜古谷実版「アメリ」は微笑ましくない〜

連載第二回目です。だんだん古谷実作品のリズムが出てきました。主人公の名前も判明。富岡ゆうじ君(32)だそうです。 前回までのあらすじはこちらへ。わにとかげぎすとアメリの共通点についても書いてます。 さて今回。小さい頃からずっと孤独を愛していたは…

「わにとかげぎす」連載はじまり 〜第一話:めざめ 向こう側と自分をつなぐ不吉な手紙〜

さて第一回目。バイト先で手に入るにも関わらず、バイトまで待ちきれずにヤンマガを買いにいってしまいました(失笑)。ちょっとだけ内容を説明します。 今回のわにとかげぎすの主人公は、思わず流れ星に「友達が欲しい」と祈るほど、強烈に孤独を感じていま…

新連載「わにとかげぎす」

今週のヤンマガに予告がありました。「世間から置いてけぼりくらった人たちが、なんとか人並みになろうと勝負するお話」とのこと。短編orマルチスレッド形式なのかな?とにかく、初回に出てくるのは、無味乾燥な毎日を送る32歳・独身の警備員だそうな。なん…

古谷実が3月下旬から新連載 〜「向こう側」との付き合い方に注目!〜

まあ前の日記にも書いたけど、僕といっしょの村田マリコとイトキンのような関係が克明に描かれたらいいな、と思ってます。メインに置かれるかサブに置かれるかはどっちでもいいんだけど。とにかく「みんな孤独なのに、どうしていっしょにいるんだろう」って…

シャイな着ぐるみ死ね死ね団が、むき出し全裸で闊歩する不安 〜団員から見た稲中→シガテラ〜

死ね死ね団員が「愛してる」と言うまでには(あるいは言ってからも)、非常に厳しい葛藤があります。前述の通り団員は自分をさらけ出すことに強い恐怖を持っています。そしてまた同時に、恋愛とは、弱い・かっこ悪い・恥ずかしい自分を相手に見せるものだか…

ラブコメ反対死ね死ね団が「愛してる」と話すまで 〜団員から見た稲中→シガテラ〜

僕は「素の部分」を見せることを嫌います。何かに本気で取り組むことは怖いです。本気の部分で勝負して失敗したら、すんごく痛いです。まあたとえば完璧でカッコイイ人が、人前でコケただけで笑われるってのとおんなじですね。だから、本気じゃない部分でそ…