わにとかげぎす 単行本1巻発売に関するメモ

 ついに発売されました。表紙はキングクリムゾンみたいな表紙(!)です。気になる回を単発でピックアップしてこのブログも更新されていたわけですが、単行本で読むと、そのときには見えにくかったものがクリアに見えて、あらためてなるほどなあと思ったりしました。
 わにとかげぎすは、主要な登場人物たちがみな何かしらの不安や絶望を抱えています。それら不安や絶望に対抗すべき手段は、基本的にはやはり「夢」や「希望」なわけで、彼らはみなそれぞれ不安と戦いながら、夢や希望にアプローチしていきます。宝くじおじさんは金、雨川くんは弱弱しい女性、花林くんは夢に出てくる理想の女性、そして羽田さんには富岡君、という風に、それぞれがみな目標とすべき対象を持ち、それらのアプローチを描いていきます。
 それぞれが夢や希望に向かい、そこに幸福や不幸、生きがいを見出そうとしているのに対し、富岡君は少々異なった事情を持ちます。彼はそもそも不幸に陥るかもしれない、という不安を回避してきたわけで、その結果が孤独の世界という形で反映されていました。しかし、毎日を生きている以上、誰とも触れ合わないというのは絶望以外の何者でもありません。かつての理想郷に絶望してしまった富岡君には、大きな幸福や不幸、これをとったら何も残らないという生きがいとしての夢はありません。ひとつ、友達を作る、というささやかな目標を立てます。
 第一巻の話の中での感想のみ書いたので、かなり「これからをチェック」という他ない内容になってしまったのですが、連載においては雨川くん編が始まっています。彼のドラマチックな生き様は、富岡君に何をもたらすでしょうか。