「わにとかげぎす」メモ(第15話参照)

 雨川くんの惚れた女性、ヤクザにレイプされたとかで弱み握られて、無理矢理そのヤクザの愛人にされているということが前回判明。その女性がヤクザの手から逃れるために、ヤクザの部屋に保管されている金庫(雨川くんの好きな女性を含む、多くの被害者のレイプ映像が入っているらしい)を強奪して処分しようという作戦が持ち上がります。
 この金庫は、不安そのものです。金庫をどうにかすれば楽になれると信じ、不安と真正面から対峙するその女性からは、やっぱり村田マリコ(「僕といっしょ」でイトキンと一時同棲する女の子)や、ヒミズの住田が感じられます。
 古谷実作品における、不安との付き合い方の変遷を見ていくと、ヒミズはそれと正直に向き合うことで潰れてしまい、シガテラは不安を凌駕する幸福を、刹那的にメタとして捉えることで克服しました。わにとかげぎすの最初に出てきた宝くじおじさんは、「夢」を刹那的に、単なる感情移入装置と知っていながら消費することで不安を克服していました。シガテラ型です。雨川の好きな女性はヒミズ型といえるでしょう。そこに富岡君に対応する羽田さんはどうなのか、これから気になります。
 もうひとつ、わにとかげぎすで注目できるのは、富岡君や雨川くんら主人公たちは孤独を抱えており、それに対応するように、彼らと対になる女性たちが不安と向き合っている、という点です。その女性たちの不安に、なんらかの形で決着がつくとき、主人公らの孤独はどうなるのでしょうか。今までの古谷実作品が、孤独と不安を平行して扱っていたのに対し、今回の作品では、両者をいったん切り分けることで、よりクリアな何かが見えてくる気がします。